034 落胆

条件交渉をふがいなく終え、いよいよ新居を

探そうと息巻いたわたしだったのですが、

敏腕部長から連絡があり、こう言われました。

「4月からしばらくは大阪で勤務して下さい。」

 

部長は容赦なくたたみかけます。

「正直ね、僕が面接してるのに、入社からイキナリ

東京の部署に丸投げするのはキビシイです。

東京からしたら、こいつ誰やねん、大丈夫なんか?

ってなるでしょ?」

 

…ひどい!もうちょい、言い方あるでしょうが!

 

「というわけなんで、最初は大阪で働いてもらって、

勤怠とか、もろもろ問題ないと判断してから

東京に異動かけます。まあー2、3ヶ月?」

 

「(語気強く)2ヶ月でお願いします、2ヶ月で!」

 

というわけで、春からの新生活は少なくとも

6月頃まで延期されてしまったのでした。

物件なんて、3月にあらかた埋まってしまう…

出鼻をくじかれたのは、とてもショックでした。

 

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033 シューカツ

東京行きが決まって、

次は所属する会社を決める段階になりました。

 

ご縁があった会社の、部長さんに

お会いしたのですが。

 

これがもう、苦しくて苦しくて!

自分が苦しんできた世界、

IT派遣の営業の超・叩き上げなかんじの人と

同じ空間にいること自体が苦痛!

注:いい人なんですけどね、とても

 

条件交渉しないといけないところなのに

その気力、まったく出せず。

さっさと終わらせたい一心で

言うなれば、不戦敗で妥結したのでした。

 

このとき、2月。

さあ、4月から暮らす東京の家を探さなくては!

前のめりなわたしでしたが、

そこに予想外のブレーキがかかってしまいます。

 

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032 イメトレ

東京で同じ仕事を続けてみないか、という

思わぬ提案に、わたしはたじろぎました。

つらくてつらくて会社を辞めることにしたけど
チームのマネージャーとしてではなく、
ただ、ふつうの、ひとりのワーカーとしてなら
同じ業務でも、辛くなく働けるのだろうか?

 

とにかく、試してみるしかない。
そういう立場になった『てい』で。
イメージトレーニングがはじまりました。

 

まず驚いたこと。それは、わたしが常日頃、
メンバーの業務上の会話、電話の内容を無意識的に
凄く細かいレベルでチェックしていたことです。
いやな言い方だけど、それは監視そのものでした。

 

「はあ、でもこれはもうしなくてよくなるのか」

 

メンバーが急な家の用事で帰宅したり
朝遅れたりしても、わたしがチームとして
フォローする必要はなくなります。

 

「あ、これもやんなくていいんだ」

 

そしてはたと気づいたのです。

「変な感じ。なんか自分のことだけだと
スカスカになるんだな」

 

やることやってない感、がすごくあったのです。
でも、もし続けるとしたらあんたの仕事は
こうなるのよ、と自分にいいきかせます。

 

ぞくぞくっと、不安に襲われました。
スカスカな自分、への不安。
こんなの、仕事してるうちに入らないんじゃないか。
こんなんじゃ評価されないんじゃないか。
言葉には出さないけど、態度にはかっちり出る
上司の反応が脳裏をよぎります。

 

あー、、自分が超えないといけないのは
この不安か。。。

 

決断のタイムリミットは近づいていました。
超えられるかはわかんないけど、
その対象がはっきりわかったことで
よし、やってみるかという気持ちになり
お話をうけることにしました。

 

さあ、いよいよ時間がない!
なんの時間?

 

会社をきめなければ!

 

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031 働くことは

ある晩秋の日。

お昼休みになり、何を食べようか考えていました。

いえ、正しくは『どこで食べようか』考えていました。

 

月曜日から金曜日のお昼ごはん。

わたしには毎週行く店が三軒ありました。

 

なかでも好きだったお店。

ひとつは、素敵な女性がひとりで切り盛りする、

スープランチをメインとしたカフェ。

もうひとつは、元パティシエの男性が腕をふるうカフェ。

この二つの店は、わたしにとって特別な

パワースポットのような存在でした。


あの人たちの何が、わたしを惹きつけるのだろう。

歩きながらなんとなく思いをめぐらせたとき、

ある言葉がこころにポンと浮かびました。

 

「働くことは、祈ること」

 

突然、涙がどっと溢れました。

 

彼女の、彼の、『ごはんや』としての

なんてことない日々のふるまいが

わたしにはまるで、祈りのように見えていたこと。

 

そして、その『日常のなかにある祈り』に

わたしが強くあこがれている、ということを

涙は伝えていたのだと思います。

 

 

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030 自問自答

会社を離れ、住む場所を変え

それでも同じ仕事を続けたとき

わたしは抱えてきた辛さから自由になれるのか?

 

自問自答、こたえはひとつ。

「やってみなけりゃわからない。」

…いやそこをなんとか。ヒントはない?

 

まだ仕事を頑張れていたころを思い出していました。

同じことをやっているはずなのに

辛くなさそうな人がいました。

それなら、自分も考え方を変えれば

頑張れるのかもしれない、と

当時、思っていたのです。

 

結果、頑張れなかったけど、それでも

この考え自体は一理あるとわたしには思われました。

いままでかけていた『眼鏡』をはずして

べつの眼鏡をかけてみる。

そうすれば、見慣れたあたりまえの景色も

少しは違って映るのかもしれない、と。

 

それを、いまのこの状況で、ためしてみよう。

 

時間はない、急がなくちゃ。

 

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029 分かち難いもの

東京に行っても、今までと同じ仕事を続ける。

そんなプランが現実のものになるかもしれない。

 

しかし、当のわたしは困惑のなかにいました。

 

苦しかった会社生活と、現場での仕事。

そのふたつはわたしにとって渾然一体、

境界線のわからないものでした。

 

なので、会社を辞めても、仕事を続けたら

また辛い日々に引き戻されるのではないか。

それはわたしにとって、恐怖でしかありませんでした。

 

「もう頑張れない」そんな気持ちをもったまま

この仕事を前向きに続けられるものだろうか。

 

わからない。胸が苦しくなりました。 

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028 ケイゾク?

退職宣言その後。

ありがたいことに、現場のお客様は

会社を辞めてもこの仕事は続けたらいいのに、と

おっしゃってくださいました。

 

しかし、わたしの東京計画はすでに

かなり盛り上がってしまっていたので

大阪に残る選択肢は全くありませんでした。

そうしたら、お客様はなんと

「東京で今までの仕事をやればいいんじゃない?」

というプランを出してくださったのです。

 

いやーそれは無理でしょう…と思いましたが

よく考えてみれば、わたしの仕事の大半は

黙々とパソコンに向かうか

画面上で先方と同じデータを眺めながら

お客様や、お客様のお客様と

電話でお話しするようなスタイル。

 

だったら、どこにいたってやれるんじゃないか。

 

だけど、わたしは踏み切れませんでした。

 

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