015 2つの道と、直感

ある日のレッスン。

数回歌ったあと、先生の唐突なひとこと。
「うん、いいね、じゃあこの曲はおわり。新しい曲やります」
え?いきなり?と面食らいました。そう、そもそも
ボイトレは曲を仕上げるものではないのです。
はじめの一歩である『声を出すこと』を
この曲で学ぶ、ということだったようです。

「方向性としては2つあるね。
綺麗めに歌い上げる系と、パワフルなのと。
どっちの方向でいきましょうか?」

わたしは、声を出すことによって、からだの奥底から
湧いてくるパワー、活力のようなものの存在に
気づきはじめていました。
消えそうだったわたしの中のロウソクの灯りが、
その勢いを取り戻しつつあることを感じていたのです。

「パワフルなやつで!」思わず即答していました。
直感で、自分に必要なものを選んだのでしょう。
でも内心、その答えに『ひいている』自分もいました。
自分にそんな歌が歌えるわけないのにな、と。 

「パワフル系ね…そしたら…」
歌詞の束をあさりながら先生が放ったひとことが、
わたしのハートを鮮やかに撃ちぬきました。

「グラディス・ナイトはどうですか?」

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