044 波乱の内覧

山手線・高田馬場駅で電車が止まってしまい

焦りに焦ってタクシーと電車を乗り継ぎ

駅からの道をいそぎました。

 

やがて目の前に見えて来たのは

緑美しい一軒家のシェアハウス。

 

わたしの母くらいの年齢の大家さんと、

退去予定のそのお部屋の住人のかたが

出迎えてくれました。

 

突然のトラブルに平身低頭のわたしでしたが、

大家さんはあっけらかんとした様子で

ああ、東京のひとのこういうさっぱり感、

割と好きだわ、なんて思いました。

 

スリッパに履き替え、中にはいると

なにか、とてもいい空気が流れているような

感じがしました。

気分がすっとする。深呼吸したくなる。

 

それもそのはず、この家は天然木や珪藻土といった

自然素材にこだわって贅沢に作られたお家でした。

間取りもユニーク。家の中央は吹き抜け仕様で

大きなガラス窓から陽の光が射しています。

 

わたしが入居を希望する部屋は

元々書斎として作られた部屋を改装したので

天然木の作り付けのすてきなデスクがあり

収納の大半は“本棚”。

家具を置ける床の空きスペースは、ゼロです。

ストーブを置いたら、終了、っていうくらい。

 

ベッドは、なんとか納めたセミシングルの

小さなベッド。仮眠用みたいな感じです。

 

ただひとこと浮かんだワードは

 

『断捨離』でした。

 

住人の彼は、よくやってこれたなぁ。

これはちょっと、覚悟しないとなぁ。

 

そして、シェアハウスという場所を見ることすら

初めてだったわたしにとって、衝撃の事実が

大家さんの口から明かされました。

 

「うちはね、個々の部屋にカギがないのよ」

 

…なんですと?

 

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